セネカの「怒りについて」を読む9

「怒りについて」

Aspice nōbilissimārum cīvitātum fundamenta vix notābilia: hās īra dējēcit.

aspiciō, -cere : 見る、じっと見つめる、気づく、考察する

nōbilis, -is, -e : よく知られている、高名な、高貴な

cīvitās, -ātis, f. : 市民権、国家、都市

fundamentum, -ī, n. : 基礎、土台、根拠

vix : 辛うじて、やっと、いやいや、ほとんど~ない

notābilis, -is, -e : 注目すべき、目立つ、顕著な

dēiciō, -cere, -jēcī, -jectum : 下方へ投げる、投げ落とす、打ち落とす、伏せる、追い出す、遠ざける

<和訳>
かろうじて見える、高名な諸都市の礎を見よ。それらを怒りが打ち落とした。

Aspice sōlitūdinēs per multa mīlia sine habitātōre dēsertās: hās īra exhausit.

sōlitūdō, -dinis, f. : 孤独、不在、荒野

mille (pl. mīlia) : 1000(の)、無数の

habitātor, -ōris, m. : 居住者

dēsertus, -a, -um : 見捨てられた、荒れた、寂しい

exhauriō, -īre, -hausī, -haustum : 汲み出す、取り出す、奪う、空にする、枯渇させる、衰弱させる

<和訳>
住む人のいない見捨てられた数千マイルにもわたる荒野を見よ。それらを怒りが奪った。

multa mīlia の後には passūs が省略されていると考え、数千(ローマ)マイルと訳しました。

exhausit は何かを枯渇させ、空にするといったイメージです。

Aspice tot memoriae prōditōs ducēs malī exempla fātī:

tot indecl. adj. : <+pl>これだけの数の、これほどたくさんの

memoria, -ae, f. : 記憶力、記憶、思い出、記録

prōditus, -a, -um, pp.>prōdō, -ere, -didī, -ditum : 押し出す、生み出す、任命する、見捨てる、裏切る、あばく

dux, ducis, m. : 指導者、案内者、指揮官、君主

malum, -ī, n. : 悪、欠点、不幸、損害、罰

exemplum, -ī, n. : 写し、例、模範、見せしめ、内容、仕方

fātum, -ī, n. : 神託、神意、自然死、運命、破滅

<和訳>
記憶に残る裏切られた指導者たちの、これほどたくさんの不幸な運命の先例を見よ。

ducēs と exempla はどちらも複数対格で、同格(apposition)として捉えました。
つまり直訳すれば「記憶に残る裏切られた指導者たち=不幸な運命の先例を見よ」となります。

alium īra in cubīlī suō confōdit,

cubīle, -is, n. : 寝床

confodiō, -ere, -fōdī, -fossum : 掘り起こす、刺し通す、打ち倒す、致命傷を与える

<和訳>
怒りはある者をその寝床で刺し殺した。

alium intrā sacra mensae jūra percussit,

intrā prep. : <+acc>~の内部に、の間に、の範囲内で

sacer, -cra, -crum : 清められた、呪われた、神聖な

mensa, -ae, f. : 食卓、料理、祭壇

jūs, jūris, n. : 法、権利、法廷、正当

percutiō, -ere, -cussī, -cussum : 激しく打つ、突き刺す、打ち殺す、だます、刻印する、切る

<和訳>
ある者を神聖な祭壇の法の中で打ち殺した。

宗教儀式など、本来争いの場ではないところで(怒りによって)人を殺めたという意味でしょうか。

alium intrā lēgēs celebrisque spectāculum forī lancināvit,

lex, lēgis, f. : 法、契約、おきて、原理

celeber, -bris, -bre : 混んでいる、いっぱいになった、有名な、頻繁な

spectāculum, -ī, n. : 光景、見もの、見世物、見ること

forum, -ī, n. : 公共広場、市場、商売、政治、法廷

lancinō, -āre, -āvī, -ātum : ずたずたに裂く、切りさいなむ

<和訳>
ある者を法と広場の衆人環視の中でずたずたに裂いた。

celebrisque spectāculum forī は直訳すれば「混んでいる広場の見世物」となりますが、文脈から多くの人の目の前という意味でとりました。

alium fīliī parricīdiō dare sanguinem jussit,

fīlius, -ī, m. : 息子

parricīdium, -ī, n. : 親殺し

sanguis, -guinis, m. : 血、流血、活力、血統

jubeō, -ēre, jussī, jussum : 命ずる、促す

<和訳>
ある者には、親殺しにその血を捧げよと命じた。

直訳すれば「(怒りは)ある者に息子の親殺しに血を捧げよと命じた」となりますが、文脈から息子=ある者と解釈し、わかりやすくするために「息子の」は省略しました。

alium servīlī manū rēgālem aperīre jugulum,

servīlis, -is, -e : 奴隷の、卑しい

rēgālis, -is, -e : 王の、王にふさわしい

aperiō, -īre : 開く、通行可能にする、おおいをとる、明らかにする

jugulum, -ī, n. : 鎖骨、のど、のどを切ること、殺害

<和訳>
ある者には、奴隷の手によって王の喉を切り開けと命じた。

前文の jussit が省略されていると考えます。

ある者=奴隷と考えれば、怒りが主君殺しを促したととれます。

ある者=王と考えれば、奴隷の手を借りた自決(介錯)ともとれます。

alium in cruce membra diffindere.

crux, crucis, f. : 十字架、拷問

membrum, -ī, n. : (pl.) 四肢

diffindō, -ere : 裂く、割る

<和訳>
ある者には、十字架の上で四肢を裂けと命じた。

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